お宝アーカイブスその2
農学校時代から続く
「札幌同窓会報告」

概要

現在の一般社団法人札幌農学同窓会の前身である札幌同窓会は、札幌農学校から続く北大150年の歴史の中で最初に設立された同窓会です。 そこでは明治20年から昭和19年までの57年の間に計67回の札幌同窓会報告が発行されました。 各回報告は同窓会の活動、会員の動静などをつぶさに報告し、大学を巣立った数多の先人たちの活躍ぶりを記した歴史的文書です。 逝去した会員の生涯を学友が綴った「小伝」が370編以上、肖像画、風景、絵葉書などの写真が450点以上あり、このアーカイブスではこれらの文書・写真類を総覧することができます。

ピックアップ各回報告

ここでは、正会員様以外の方にも見ていただけるように全67回の札幌同窓会報告の中で特に重要な回を6つピックアップしました。写真や原文のpdfはもちろん、出村先生による解説も読むことができます。長い歴史の中紡がれてきた札幌同窓会報告を、じっくりとご堪能ください。

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全体解説

出村克彦

北海道大学名誉教授

出村克彦

札幌農学校の逸話に満ちた外史

主に太平洋戦争以前の札幌同窓会の活動記録です。北海道大学発行の『北大百二十五年史』を正史とすれば、この「報告」は札幌農学校の生徒や卒業生の逸話に満ちている外史です。明治大正昭和の時代を映す大学と世相の係わりが読み取れます。各回報告では農学校を財政的に支援するための種々の募金事業、同窓生の相互扶助のための募金作り、本部の外に国内外の支部の設立と活動報告、同窓生の異動・逝去・結婚・改姓等までが報告されています。同窓会という組織が体制を整備し、民主的運営ルールを作り、大学の活動と同窓生の動向を、年2回ほど仔細に知らせてきたことがわかります。現代の組織ルールには不可欠なガバナンス(組織統治)とアカウンタビリティ(説明責任)を、100年以上前から同窓会が実践してきたことに驚かされます。現在、同窓会の改革が進行していますが、そのモデル、アイデアはまさにこのころの札幌同窓会に内在しています。 また、読み物として興味深いのは、物故会員の小伝です。「有島武郎君を懐ふ」(森本厚吉識、第45回報告)をはじめ、個性豊かな先輩たちの人生が多数綴られています。

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山本美穂子

北海道大学大学文書館特定専門職

山本美穂子

北海道大学の歴史を物語る第一級資料

『札幌同窓会報告』は第1回(1887年6月)から、戦前は第67回(1944年8月)まで発行された、北海道大学の歴史を物語る第一級の史料です。本会記事・会員の異動・同窓会員名簿を中心に編まれ、大学昇格前後の北8条キャンパスの整備状況や創基50年記念のクラーク先生胸像建立事業など、札幌農学校~北海道帝国大学の当時の現況を伝える記事も盛り込まれました。一方で、東京・京都・阪神・台北・北京各地の支会の会員動静、逝去会員の略伝(追悼録)など、同窓会員の動静がわかる記事も豊富になり、『札幌同窓会報告』は大学と同窓生との間に各種情報を相互に交換・共有できる架け橋となっていきます。さらに、教官・学生・同窓生の海外留学や国内外の出張状況、北海道庁・台湾総督府・朝鮮総督府・高等農林専門学校・県立農学校・南満洲鉄道株式会社・大日本麦酒株式会社・北海道拓殖銀行などの就職先の動向も1880~1940年代まで通覧できることから、大学史・産業史・科学史等の各種領域の研究資料として現在も活用されています。

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