札幌本部 2022.09.25 新渡戸先生生誕160周年で記念講演会開かれる 北海道大学農学部と札幌農学同窓会が主催する市民公開講座として「新渡戸稲造生誕160周年特別記念講演会」が2022年9月23日、北海道大学農学部本館の大講堂で開催され、一般財団法人新渡戸稲造基金(盛岡市)の藤井茂理事長が「新渡戸稲造:その業績とSDG’s」と題し講演しました。WEBでも同時配信されました。 【講演する藤井理事長】 講演会は132名の予約が入っており、当日は雨が降っていたにもかかわらず非常に多くの方が参加し、席のほとんどが埋まっていました。また、オンライン参加には170名が予約されており、計約300人規模の方が講演会に参加されたことになります。 【雨の中を来場した参加者でほぼ満席となった会場】 会の冒頭、西邑隆徳農学研究院長、横田篤北大理事・副学長、松井博和札幌農学同窓会理事長による挨拶が行われました。 西邑先生は、「北大農学部入り口の大木は、新渡戸稲造先生の奥さんであるメアリーさんが1905年に植樹した。このハルニレの樹から作られた種から苗木をつくりキャンパス内で育てていくように、我々も新渡戸カレッジなどを通じて新渡戸稲造の意志を次世代へと伝えていく」との趣旨を話されました。 【挨拶する西邑研究院長】 次に横田先生からは、SDG’sへの取り組み度を示す「THE(ティー・エイチ・イー)インパクトランキング」で、北大が世界の1406大学中10位という名誉に輝いたこと、そしてこの結果は、新渡戸先生が行ってきたSDGs追求から繋がっていることを話されました。また、新渡戸先生の事績を後世に伝えるために札幌市内で進められている「新渡戸遠友館」(仮称)の建設を目指す事業が、北大創基150周年(2026年)記念事業の「応援事業」として位置付けられたことが報告されました。 【挨拶する横田理事・副学長】 松井理事長よりこの日講演される藤井先生の紹介が行われ、講演会がスタートしました。 【挨拶する松井理事長】 藤井先生が話された内容を一部抜粋して紹介いたします。 【新渡戸先生の言葉や行動について詳しく紹介する藤井理事長】 ・新渡戸をはじめとして札幌農学校2期生は日本人としてバカにされたくないという気持ちが非常に強かった。新渡戸が執筆した『武士道』は、「日本人をバカにするな」という気持ちから書かれた内容だった。また、国連においても日本人に対して「ここは仕事をするところではないぞ。日本人をみせるところだ」と伝えたという。 ・新渡戸の心の中には性善説がある。新渡戸は「With malice toward none, with charity for all-誰に対しても悪意を抱かず、すべてに人に慈悲の心を持って」というリンカーンの言葉を大切にしていた。そのため、生徒から学費の相談を受けた際などは「私が支援をしてあげよう。勉強しなさい」と人のためにお金を使うことが多かった。 【新渡戸先生の事績を年代別に詳しく辿る藤井理事長】 ・新渡戸は人の話をよく聞く人だった。また新渡戸自身も脱線した話をよくする人で、学生は脱線した話に耳を傾けることが大事だったと回顧している。新渡戸がよく脱線した話をすることは、自身の頭の中身がまとまらない結果だったと本人が伝えている。 ・新渡戸はジェンダー平等を実践していた。東京女子大学の初代学長だった新渡戸は、「可愛いね」という言葉は中学校以上の生徒には決して使わなかった。また、恵泉女学園の創立者である河井道が学校を建てようとした際は、「学校運営が大変であるためやめた方がいい」と進言したものの、いざ学校を建てた後は、「保証人にしてほしい」と河井に願い出たという。女子教育が難しいと知りつつも、その発展には尽力する姿勢を見せていた。 【豊富な写真や資料も紹介する藤井理事長】 ・新渡戸の業績はSDGsと切っても切り離せない関係だった。松井理事長と藤井先生により、その関係性がまとめられています。 【新渡戸稲造先生の事績とSDG’sの対応一覧】 これほどまでに多くの業績を上げた新渡戸先生ですが、自身は業績よりも人間としてどのように崇高に生きていくかを大事にしていました。「太平洋の架け橋になりたい」という言葉を残した新渡戸先生は、本当の意味での国際人であっただけでなく、世界各国で必要性が迫られているSDGsを向いた行動を、自ら率先して実践していた人であったことを改めて理解し、同じ母校の学生である我々も新渡戸先生の意志を継いでいきたいと改めて考えさせられる講演会でした。 【講演会のポスター】 講演会は、北大北方生物圏フィールド科学センターと一般社団法人新渡戸稲造と札幌遠友夜学校を考える会が共催し、北海道大学サステイナビリティ推進機構が協力して開催されました。また、講演団体は以下の24者です=五十音順= (株)クラーク総研、(公財)札幌国際プラザ、札幌市、札幌市教育委員会、札幌商工会議所、JA北海道中央会、(株)JTB、(株)道銀地域総合研究所、東武トップツアーズ(株)、新渡戸稲造会、(一財)新渡戸基金、日本甜菜製糖(株)、(一財)HAL財団、北海道、北海道銀行、北海道経済連合会、(一社)北海道健康医療フロンティア、北海道コカ・コーラボトリング(株)、(一社)北海道商工会議所連合会、(一社)北海道地域農業研究所、(一社)北海道農業会議、(公社)北海道農業改良普及協会、(公財)北海道農業公社、(一財)北海道報徳社 (文:さっぽろ農学校リポーター・林芳弘=D3、写真:さっぽろ農学校特別講師・櫻井徳直)