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札幌本部

2024.01.05

当会助成事業で渡航し国際学会で発表

ベトナムで開催されたInternational Food Animal Conferenceに参加した院生・楠野さんインタビュー

札幌農学同窓会では、修士課程・博士課程の大学院生を対象として、国際学会での研究発表に必要な渡航費および宿泊費を、最大15万円まで助成する事業を毎年行っています。2022年度には全8件の募集全件に対し、計120万円の助成を行いました。学会発表後、院生は渡航報告書を大学事務まで提出しますが、同窓会の皆さまに報告する機会も設けるべきと考え、2023年度に渡航助成事業を利用した院生の一人、楠野莉奈子さん(農学院修士課程2年、遺伝繁殖学研究室所属)にお話を伺いました。

―どのような学会に参加されましたか?

「ベトナムカントー市で開催されたInternational Food Animal Conference(IFAC2023)という学会で、8/30-31の2日間にわたって開催されました。11ヵ国計250人以上が参加した大きな学会で、畜産物の生産性向上など、持続的な畜産事業の継続に向けた発表が行われました」

ーどのような内容について発表しましたか?

「熱ストレスがかかったウシ卵子の品質を高める研究について発表しました。温暖化の影響による高温環境は、暑さへの耐性が少ないウシにとって非常に強いストレスとなります(当ニュース欄「北大の牛たちもグッタリ 猛暑の牧場から」参照)。熱ストレスはウシの卵子に対しても大きなダメージを与え、妊娠率や出産率の低下を引き起こします。仔ウシを出産することでウシは乳生産が行えるため、妊娠率と出産率の低下は酪農家にとって非常に深刻な問題となります。そこで私は、アスパラガスの廃棄茎部から酵素分解・抽出・精製された機能性食品EAS (Standardized extract of Asparagus officinalis stem)を用いて、熱ストレスがかかったウシ卵子の品質を高める研究について発表を行いました」

【学会会場に掲示された自らの研究ポスターと楠野さん】

―発表についての反響はどうでしたか?

「各国の先生方に『とてもいい発表だ』と褒めていただき、ベストポスター賞をいただきました。担当教員の高橋昌志教授に恩返しができ、非常に嬉しかったです」

【ベストポスター賞受賞後に記念写真に収まる楠野さん(右から2人目)と高橋先生(左から2人目)】

―学会以外に何か興味深いことなどありましたか?

「遺伝繁殖学研究室OBのKhoiさんにスーパーに連れていってもらったときのことなんですが、Khoiさんに『日本人はなぜかスーパーに行きたがる。そしてすごい喜ぶ。変すぎ』と、笑いながらカートの中身を撮影されたことですかね。少し恥ずかしかったです」

【ベトナムのスーパー内の商品棚。主に乳製品が並ぶコーナー】

―ほかにも驚いたことなどはありましたか?

「まずバイクの量が非常に多いです。本当に衝撃を受けました。信号もないのに事故することもなく右折左折しており、不思議で仕方ありませんでした。また、これまでは先進国にしか行ったことがなかったため、ベトナムの街の汚さには驚きました。お世辞にも綺麗とは言えない水の色や、見たこともないフルーツが売られており、見応えは非常にありました。ただ不思議なもので、3日目には慣れており、人間の適応力はすごいなとも思いましたけど(笑)。初めて発展途上国に行き、世界が変わっていかねばならないことはまだまだたくさんあると気付かされました」

【ベトナムの道路は非常に多くのバイクでごった返していた】

【食料品店など商店や住居が密集している一角】

【ベトナムの路上市では、日本で見たこともないフルーツなどが売られていた】

―ベトナム料理の方はどうでしたか?

「日本では見たこともない野菜やきのこ、魚ばかりでしたが、非常に美味しかったです。アジア料理は日本人の味覚に合っているのかなと思いました」

【学会初日に様々な先生方が参加して開かれた食事会における料理】

【学会最終日の打ち上げの料理。鶏と『目が合った』のには驚いた】

―最後に大学院生海外渡航助成事業について何かあれば教えてください

「今回、海外渡航助成金を利用して国際学会に参加し、ポスター賞という名誉ある賞をいただくことができました。このような機会を作ってくださった札幌農学同窓会に感謝致します」

アイキャッチ画像(最上段の写真)は、東南アジア最長の長さを誇る国際河川メコン川と楠野さん

(さっぽろ農学校リポーター・林芳弘=D3、写真は楠野さん提供)