荒谷佑さん(生物資源学科卒業)
■■インタビュー■■
――なぜ北大へ?
「北大の農学部に進学したかったからです。小学生のころ、北京の小学校に通っていた時期があったのですが、そこの給食が本当においしくなくて。ただ、世界にはおいしくない給食ですら食べられていない子たちがいるということを知って、食糧問題に興味を持つようになりました。高校生の頃は食糧危機を量的に解決するために農学部で作物系の勉強がしたいと思っていました。しかし、実際に農学部に進学して授業で学び始めると、食糧問題には食品廃棄や家畜飼料への分配、地域的な偏在といった様々な問題が複合的に絡んでいるということがわかりました。」
――自然栽培に興味を持ったきっかけは?
「農学部で学ぶうちに、環境への配慮ということにも興味を持ちました。畑作で除草剤をまいたりするとどうしても生態系が変わってしまうし、生き物のすみかを奪ってしまう。生物と共生できる農業ということで自然栽培の研究を行っている園芸学研究室の実山(豊)先生のところで学ぶことに決めました。」
――自然栽培にもいろいろとありますよね? 「そうですね。2年ほど前に、ヒッチハイクで岩手、鹿児島、沖縄の自然栽培をやっている農家さんを回ったことがあります。そこで自然栽培に関して話を伺ったり、実際の農作業を手伝わせていただいたりしました。自然栽培は生き方というか哲学的な部分もあって、自然栽培という考え方に共感して始めている人も多い印象です。自然栽培は有機栽培と違って、外部からの有機物の持ち込みもないのでどうしても収量が落ちてしまいます。なので、自給自足の分だけを育てる分にはいいけど、都市部の需要を支えるようなメジャーな農業にするには難しいと感じました。有機農業と自然栽培のいいとこどりができるような方法を今後見つけられたらいいなと考えています。」
――北大生活4年間で楽しかったことは何ですか
「昨年の春休みにケニアに滞在したことです。柏木(純一)先生の授業で途上国の農業について学ぶ機会があり、実際に見てみたいと先生に相談しました。ちょうどケニアで現地の食生活の調査と食事のレシピ化に関する研究を行っている知り合いの研究者がいるということで、その先生の元で1月半お手伝いをさせてもらいました。マサイ族の村でホームステイの経験もできましたし、レシピ調査で覚えた料理を日本で再現したりもしました。」
――逆に苦しかったことはなんでしょう
「1年生の時の授業ですね。受験期よりも勉強しました。特に物理、化学、数学が苦手なんですが必修で落とせなかったのと、新渡戸カレッジのカリキュラムとの両立が大変でした」
――オランダのワーゲニンゲン大学に進学予定とのことですが、進学先はどうやって決めたのですか?
「大きな理由の1つはオーガニックマスターという有機農業に特化したコースがあることです。また、2年目からはフランスのグランゼコールという教育機関でアグロバイオロジーを学ぶことができます。」
――進学先での目標と今後の進路希望について教えてください
「とりあえずは2年間なんとか生き延びることと、むこうでのコミュニティを作ることですね。あと、ヨーロッパでは日本よりも有機農業が受け入れられているので、その文化的背景に関しても学んできたいと思っています。卒業後は、国際協力に興味があるので最終的に国連関係で働けたらいいなと考えています。」
■■先輩たちと後輩たちへのメッセージ■■
先輩たちへ:以前JICAの方に言われた言葉に「先人から受けた恩はその人ではなく次の世代に回せ」というのがありました。コロナ禍でお世話になった恩を私も後輩に返せるように精進します。また、これからも農業分野に携わっていくつもりなので、今後関わる機会もあるかと思います。その時はぜひよろしくお願いいたします!
後輩たちへ:海外留学へのハードルは思ったよりも高くないので、もしやりたいことがあるのであればぜひチャレンジしてみてください。また、本気でやりたいと思うことは周りの人が手を差し伸べてくれるので、先生をはじめとして周囲の人間に頼ってみてください。
■■略歴■■
あらや・ゆう 1998年中国福建省生まれ、千葉県育ち。父親が北京で勤務していたことから小学校3‐5年生の2年間を北京の現地校で過ごした。2017年4月に北海道大学総合入試理系入学。志望していた農学部の生物資源学科に分属し、2021年3月に卒業。2021年9月からオランダのワーゲニンゲン大学へ進学。
(さっぽろ農学校元リポーター・市村恵美、写真も)